AGA(男性型脱毛症)を治療する施術方法はいくつか存在し、AGAクリニックで受診することが可能です。
内服薬やメソセラピーなど、複数種類がありますが、それぞれどんなことをするのか、どんなメリットデメリットがあるのかを確認してみましょう。
AGA治療を行う時の注意点
AGAクリニックでのAGA治療、または皮膚科における薄毛治療を受診する際に気を付けたい点は、「薄毛治療、またはAGA治療は自由診療である」という点です。
自由診療とは、健康保険などの保険が適応外の診療のことで、全額自己負担の診療のことを指します。AGA治療薬には、保険適応外の治療薬である「ミノキシジル」という成分の内服薬が使われることがあったり、他国のAGA治療薬を医師が輸入して処方するケースがありますので、AGA治療・薄毛治療に関しては自由診療扱いになります。
AGA治療の種類について
AGA治療にはいくつかの種類があり、発毛効果に関してはそれぞれメリットやデメリットが異なります。
施術名 | メリット | デメリット |
内服薬 | 手軽に始められる | 治療期間が長い |
メソセラピー | 投薬治療よりも結果が早い | 高額治療になる |
植毛 | 手術後すぐに結果が出る | 高額治療になる |
発毛剤 | 手軽に始められる | 抜け毛は収まらない |
育毛剤 | 髪の毛が育ちやすい | 発毛はしない |
AGA治療の種類とメリットデメリット表
手軽に始められる内服薬や、手術後に見た目がすぐに変わる植毛など、種類も良し悪しも様々です。また、メリットもデメリットも一つしかないわけではありません。
一つ一つの良し悪しをきちんと理解しておけば、カウンセラーの営業トークなどに惑わされることなく安心してAGA治療を行うことができるでしょう。
AGA治療①内服薬
治療方法 | 内服薬・外用薬 |
治療期間 | 本人が納得いくまで |
治療効果の結果 | 半年~1年程度 |
治療費用 | 6,000円~30,000円程度 |
AGA治療 内服薬・外用薬の概要表
AGAクリニックが行うAGA治療は、そのほとんどがAGA内服薬における投薬治療です。AGA治療薬には数多くの種類がありますが、主に3つの薬の成分によって治療を行います。
AGA治療薬主成分その1 フィナステリドの効果(作用機序)
成分名フィナステリド・製品名プロペシアは、5α還元酵素Ⅱ型阻害薬です。AGAの概要についてでも解説しているように、男性ホルモンが5αリダクターゼという酵素と結びつくことで、ジヒドロテストステロン(DHT)へと変換されます。ジヒドロテストステロンが毛乳頭細胞へと取り込まれ、成長の促進と抑制のシグナルを出している毛乳頭細胞が、成長抑制のシグナルを出してしまいます。そしてヘアサイクルが乱れてしまい、毛髪が早期に脱毛してしまうことがAGAの原因です。
フィナステリド(プロペシア)は5α還元酵素Ⅱ型阻害薬ですので、髭や前頭から頭頂毛の毛乳頭細胞に分布している5α-リダクターゼⅡ型を抑制する働きを持ちます。これにより、ジヒドロテストステロンへの変換を抑制し、ヘアサイクルが乱れることによる抜け毛を予防していく薬です。
AGA治療薬主成分その2 デュタステリドの効果(作用機序)
成分名デュタステリド・薬剤名をザガーロは、フィナステリドと同じ5α還元酵素阻害薬としての役割を持っています。フィナステリドとデュタステリドの違いは、効果的に阻害する5αリダクターゼの種類が異なることです。
前述したとおり、フィナステリドは前頭から頭頂毛の毛乳頭細胞に分布しているⅡ型に効果的対して、デュタステリドはⅡ型とⅠ型のどちらにも効果があるとされています。5αリダクターゼⅠ型は全身の毛乳頭細胞にあるとされていますので、フィナステリドで効果が出なかった人がデュタステリドに変更するということが多いようです。
血管拡張の作用があることから、「アボルブ」という高血圧の薬として処方されてきました。しかし副作用として多毛症(体の各所から多量の発毛が起こる症状)があることが判明し、それを利用してザガーロという商品名でAGAクリニックで取り扱っています。
2020年10月ごろに特許の満了を迎えたザガーロは、各製薬会社からジェネリック薬が続々と開発され、多くのAGAクリニックでも取り扱うようになりました。
余談ですが、ザガーロと同じ成分ですが高血圧の薬として処方されるアボルブのジェネリック薬も2020年6月ごろから発売されており、ザガーロのジェネリックが発売される前に、ザガーロ(AGA用の治療薬)を取り扱うAGAクリニックでアボルブ(高血圧用の治療薬)のジェネリックを処方するところもあったとか。
AGA治療薬主成分その3 ミノキシジルの効果(作用機序)
ミノキシジルは、日本国内で唯一発毛効果があるとされている成分です。大正製薬のリアップやアンファーのメディカルミノキといった、発毛剤のCMで聞いたことがある人もいるかもしれませんね。どちらの商品にもミノキシジルが含まれているため、育毛剤のような化粧品の区分ではなく第一類医薬品の発毛薬として販売されています。(第一類医薬品は、一般用医薬品の中で最も副作用が生じる可能性の高い商品のことで、購入前には薬剤師などから商品の説明をする必要があります。)
ミノキシジルの作用機序は未だ解明されていないことも多いですが、毛包に直接働きかけると言われており、毛髪の細胞の元となっている毛母細胞を活性化させます。毛母細胞とは、毛乳頭細胞からの発毛指令を受けて細胞分裂をする細胞です。毛母細胞が細胞分裂すると、新しい細胞が古い細胞を押し上げるような形で伸びていきます。毛包が活性化するということは、乱れたヘアサイクルによってミニチュア化した毛包が再び、元のように正常な毛包になるということです。
ミノキシジルの初期脱毛とは
毛母細胞が活性化することで、毛包が正常化されて太く長い毛を育むことができます。しかし毛母細胞が活性化すると、休止期の毛ではなく、新しく生えてきている毛髪が成長しますので、細く短い毛が抜けます。これはミノキシジルを取り入れるとほとんどの人が起きると言われている「初期脱毛」と呼ぶものです。
AGA治療薬の組み合わせは2種類
フィナステリド、デュタステリド、ミノキシジルの説明をしてきましたが、AGA治療として服薬するのはこの内の2種類、ないしは1種類になります。
AGA(男性型脱毛症)の初期、いわゆる「頭皮は透けて見えないけれど、抜け毛が増え始めて心配」という人は、5α還元酵素阻害薬であるフィナステリドかデュタステリドで治療を開始します。AGAの進行がより進んでいる人は、そこにミノキシジルの薬も追加されるでしょう。多くの人の場合、余程注意深く見ていないと、「抜け毛が以前よりも増えていてAGAなのかもしれない」と感じることは少ないので、フィナステリドとミノキシジルの薬をセットで処方されるでしょう。
AGA治療② メソセラピー
AGA治療におけるメソセラピーとは、治療薬を服用せずに、注射器や器具を使って頭皮に直接薬剤を注入する施術のことです。
AGAクリニックでは様々な名前のメソセラピーを処方しており、名前も「オリジナルメソセラピー」と名付けていますが、注入治療としてある種類はつだけです。
では何が「オリジナル」なのかというと、ほとんどが独自で配合するビタミンや亜鉛、ミネラル成分といったものを微量に調節しているだけです。ほとんどの治療では「ミノキシジル成分」が含まれており、その他の成分を医師による調合で決められています。
AGAクリニックでも「オリジナルメソセラピー」などと記載があるようなところは、成分を他のクリニックと比較してみるとよいかもしれません。ほとんどが同じ成分であることが分かるでしょう。
治療期間は種類によって様々で、人によっては1回で効果を実感する人もいれば、複数回しても効果を感じられない人もいるようです。
メソセラピー治療その1 ノーニードルメソセラピー
注入治療の中でも、注射針を使用しない方法で頭皮にカクテル(薬剤)を注入するメソセラピーの方法を「ノーニードル」や「エレクトロポーション」などとも呼ばれています。
従来のメソセラピーと違い、注射針を使用しないので痛みも少なく、かさぶたにならない治療法ですので、頭に注射を刺すのに不安に感じる人や、注射が嫌いな人でも気軽に受けることができます。
ノーニードルメソセラピーに限った事ではありませんが、最低限受けなければいけない回数というのはガイドラインなどで定義されておらず、AGAクリニックが独自で3回~6回程度のコース料金で案内しているのがほとんどです。
メソセラピー治療その2 HARG療法
HARG(ハーグ)療法はメソセラピーの一種で、こちらは専用のHARGカクテルを頭皮に注入する毛髪再生治療のことを言います。
2008年1月に日本医療毛髪再生研究会が発足され、HARG療法が確立されました。HARGとは研究会の英語名である「Hair Re-Generative」の略称で、医療機関が行う「日本医療毛髪再生研究会が提唱する医療毛髪再生治療のこと」を指します。
使用するHARGカクテルの成分は決められているので、メソセラピーのように独自配合ができません。そのため、どこのクリニックでも同じような治療結果を得られることができます。例えば2箇所の銭湯が同じシャンプーを使っていたとしても、洗い上がりに差異を感じないのと同じと言えるでしょう。
HARG療法で使用されるAAPEパウダーは、簡潔に言うと成人の脂肪幹細胞から抽出したタンパク質を冷凍と乾燥したもので、それを溶解して頭皮に注入するのがHARG療法です。
幹細胞から抽出されたたんぱく質には成長因子が豊富に含まれており、その数は130種類以上と言われております。その中には細胞の増殖や分裂などといった、細胞同士の間で情報を伝達するタンパク質、「サイトカイン」も含まれており、これらが毛包や毛乳頭細胞を活性化させるために増殖因子を出します。
日本医療毛髪再生研究会 サイトカインの作用
HARG療法では6回が1クールとなっており、クリニックによっては3回の治療を行っている所もありますが、それでも「できれば6回がオススメです」と案内しています。
メソセラピー治療その3 PRP療法
PRPとは自己多血小板血漿(autologous platelet rich plasma)の略称で、採取した自分の血液から遠心分離機で濃縮した血小板などの血球成分を抽出し、頭皮に注入する毛髪再生医療の一つです。
血小板はそもそも、血液中に含まれる有形成分の一つで、血管が損傷した際に凝集することで止血する作用があります。この作用を利用して組織を治療する方法で、ひざの変形などスポーツ選手の悩みを解決するのに取られる治療法の一つです。
血小板にはその他にも、血小板由来成長因子と呼ばれる細胞増殖や幹細胞の分化・血管新生を促す成長因子や、母細胞の増殖を促すIGF-1(インスリン様増殖因子)が含まれています。これらの成長因子によって、毛髪の成長期間が延びて毛周期を正常に戻す働きをしてくれるようになるのです。
自分の血液から採取した細胞を使うわけですので、アレルギーはほぼないと言われています。しかしそれでも腫脹や発赤が1週間程度続く人がいるようですので、医師と相談しながら経過を確認すると良いでしょう。
AGA治療③ 植毛
AGA治療方法3つ目の紹介は植毛についてです。植毛には自分の毛髪を移植する「自毛植毛」と、長さや質感を調節した人工毛を頭皮に移植する「人工植毛」の2種類に分かれています。
人工植毛と自毛植毛の比較を表でまとめてみました。
自毛植毛とは
自分の頭皮から生えている毛髪をドナーとし、健康な毛髪を頭皮が透けて見えるほど細く短くなってしまった毛髪の箇所に移植すのが「自毛植毛」です。
自身の頭皮に生えている健康な毛髪の摘出の仕方は「FUE法」と「FUT法」の2通りの方法が存在します。わかりやすく言うと、「FUT法」は頭皮を帯状に切り取り、切り取った頭皮の毛髪を毛穴ごとに切り分けて移植する方法です。
人の毛髪は1つの毛穴から1本しか生えていないわけではなく、大体1~4本の毛髪が一つの毛穴から生えてきています。その毛穴をわかりやすく「(株株(グラフト)」と数え、移植する単位として使われているのです。ですので、100株といっても「100本~400本の毛髪の量の差が出る」と考えると、想像しやすいかもしれません。
植毛で摘出する毛包は、AGAの影響を受けにくい側頭部から後頭部の辺り(耳の後ろから首の後ろ辺り)から選ばれます。FUT法はメスを使って頭皮を帯状に切り取りますが、その際には髪の毛が生える部分(毛包)ごと移植するので、移植後に髪の毛は生えてきません。FUT法で毛包を移植をしたら、帯状にぽっかりと強制的にハゲてしまうので注意しましょう。
また、メスを使用するので術後は痛みますし、ダウンタイム(手術をした箇所が元の肌の状態へと戻るまでの期間)が、個人差はありますが数日発生すると言われています。
ではもう一方の「FUE法」は、メスを使わず鋭利な筒状の刃物で毛根をくり抜いてドナー株を採取する方法です。FUT法とは異なり、1株ごとの摘出作業になるので、広範囲の薄毛治療には適しておらず、毛根を傷つけないように摘出する必要があるので、医師の技術力も必要になってきます。
FUE法はグラフトの摘出なので、帯状の傷跡が残るFUT法と違い、傷跡が点で目立ちにくいのが特徴です。
ショックロスについて
自毛植毛の手術後に起こる現象で、植毛した付近の毛髪が抜けてしまいます。原因は未だ解明されておらず、ショックロスは植毛したすべての人が起こるというわけではありません。植毛術後、1~2ヶ月程度たった後に起こると言われており、大体1年程度で元の髪の量に戻るようです。
「10%~15%の量が抜けるが、気が付かない程度ですので安心しましょう」と公式ホームページで記載している植毛クリニックもありますが、2000本の10%抜けると言われたら、200本は抜けると考えなければなりません。
ただでさえ髪の毛のことで悩んでいるのに「たかだか10~15%の抜け毛気にしないで」と言われてもそうはいきませんよね。植毛の手術を受けるときには、術後のアフターケアとしてどんなことをしてくれるのかをクリニックに確認しておきましょう。
人工毛植毛とは
人工毛植毛は、ナイロンやポリエステルといった合成繊維で、毛髪を人工的に作り、薄毛の進行した部分に植え込んでいく方法のことを指します。自毛植毛との違いは、ドナーを必要としないので好きな本数を移植することができる点でしょう。
人工毛植毛ではショックロスが起こらないとされているので、即効性には優れています。しかし自分の細胞ではないため頭皮が拒絶反応を起こす可能性があるとされているので、完全に安心はできないでしょう。
自毛は毛包や毛根ごと移植するので、定着後に正常なヘアサイクルのもと発毛していきますが、人口毛は伸びることも発毛することもありません。そのため、一度抜けたら抜けっぱなしになってしまうので定期的なメンテナンスが必要になります。
人工毛植毛のメンテナンスとは、もう一度人口毛植毛を行うことと同義です。初回の植毛費用で頭部全体に200万円かけたとしたら、抜ける量によりますが最高でも200万円また発生します。(もちろん、抜けた量が少なければ、植毛する本数も少なくなるので少額で済みます。)
このためメンテナンス費用や拒絶反応などの問題点から、ほとんど植毛クリニックでは自毛植毛をおすすめしています。
AGA治療④ 発毛剤と育毛剤
さて、4つめのAGA治療の方法は「発毛剤」と「育毛剤」です。発毛剤や育毛剤と聞くと、「リアップ」や「チャップアップ」などといった商品名を思い浮かべる人も多いと思います。
発毛剤と育毛剤の違いについて
発毛剤と育毛剤には大きな違いがありますが、その違いが分からず同じようなニュアンスで言葉を使用している人も多く見受けられます。
まず発毛剤と育毛剤の決定的な違いは「ミノキシジルエキスが入っているかいないか」という点です。前述したとおり、ミノキシジルは日本で唯一発毛効果があると認められている成分で、ミノキシジル含有商品が「発毛剤」の区分であると言えます。商品としては大正製薬から発売されているリアップやアンファーのメディカルミノキ5などといった商品になります。
育毛剤にはミノキシジルが含まれておらず、含有されているほとんどの成分が、亜鉛やノコギリヤシエキスなどといった、髪の毛を育む効果のあると期待されている成分です。
これには大きな違いがあり、発毛効果のあるミノキシジルを含んでいなければ、いくら育毛剤を使用しても意味がありません。頭皮の状態はよく畑と作物に例えられますが、AGAが発症した頭皮に育毛剤を使うということは、作物の種がまかれていないのに水を大量に与えているのと同じことです。
AGAの原因は、ジヒドロテストステロンが毛乳頭にあるレセプターと結びつき、脱毛シグナルを発生することで成長期の髪の毛を脱毛させてしまいます。発毛剤は外部からミノキシジルを浸透させることで、成長期の毛髪にアプローチすることが可能ですが、育毛剤の成分では抜け毛をストップさせることができません。
AGAが原因ではなく、例えば食べないダイエットをしていて栄養不足による抜け毛といったものであれば、髪の毛を元気にするために育毛剤を使用することは効果的だと言えるでしょう。逆にそこへ発毛剤を使ってしまうと、効果がないとは言いませんが、あまり意味がありません。
AGAクリニックで処方される外用薬も、ミノキシジル成分のローションです。AGAには発毛薬を、AGAではない抜け毛対策には育毛剤を使うように、適した使い方を心掛けましょう。